目 次 |
概 要 ..........................................2
1.エンジンコントロールシステムとは
2.エンジンコントロールシステムの方式 3.システム全体構成図 Dジェトロの系統別概要 ..................................3
1.吸気系統 2.燃料系統 3.制御系統
Dジェトロの各系統 ....................................5 1.吸気系統 2.燃料系統 3.制御系統
セ ン サ .........................................9
1.プレッシャセンサ 2.ディストリビュータ 3.スロットルポジションセンサ
4.水温センサ 5.吸気温センサ 6.O2センサ 7.車速センサ 8.スタータスイッチ 9.エアコン信号 10.排気温センサ 燃料噴射制御 .......................................13 1.燃料噴射制御の構成 2.燃料噴射の方式 3.同期噴射方式 4.噴射量の制御 5.非同期噴射 6.フューエルポンプ制御
7.インジェクタ駆動方式 点火時期制御(ESA) ..................................20 1.点火制御の概要 2.点火制御の構成 3.通常の点火時期 4.固定進角 吸気制御(T−VlS)...................................29 1.構造 2.作動 排気温警告 ........................................23 ダイアグノーシス .....................................24 1.表示方式 2.診断項目の表示 3.診断項目
フェイルセーフ機能 ....................................24 1.点火系統異常検出時 2.温度センサ異常検出時
3.バックアップ機能
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概 要 1.エンジンコントロールシステムとは エンジンコントロールシステムとは、燃料噴射射制御(EFI)を中心に点火制御(ESA)、アイドル回転速度制御(ISC)など複数の制御対象をマイクロコンピュータを応用したエンジンコントロールコンピュータで集中的に制御し、エンジンを最適な状態で作動させるシステムである。
以下に、燃料噴射制御の入出力図を示す。
2.エンジンコントロールシステムの方式
エンジンコントロールシステムは吸入空気量の検出方式でL方式とD方式に分けられる。
L方式はエアフローメータによってエンジンに流入する空気量を直接計測する方式であり、D式はエンジンのインテークマニホールド圧力をプレッシャセンサで検出する間接的な空気計測の方式である。
Dジェトロの系統別概要
1.吸気系統
エアクリーナでろ過された空気は、スロットルボデーをへてサージタンクに入いり、インテークマニホールドから各シリンダに入いる。 暖機運転中はスロットルボデーと一体化されたエアバルブの通路が開き、暖機運転に必要な空気が入いるためファーストアイドルとなる。 また、暖機後のアイドル時はスロットルバルブが閉じているため、吸入空気はスロットルボデーのバイパス通路を通ってシリンダヘ入いる。 プレッシャセンサはインテークマニホールドの圧力を検出し、電気信号に変えエンジンコントロールコンピュータに送っている。 一回の吸入行程でシリンダに入いる空気量はインテークマニホールドの圧力に比例するので、この圧力を検出することで吸入空気量を間接的に計測している。 2.燃料系統
燃料はフューエルタンクからタンク内のフューエルポンプで吸入・吐出され、フューエルフィル夕でゴミや水分がとり除かれる。その後パルセーションダンパを通ってデリバリパイプに送られインジェクタの開弁にともない燃料はインテークマニホールド内に噴射される。
プレッシャレギュレータはポンプからインジェクタまでの燃圧を調整し余分な燃料をリターンパイプからフューエルタンクに戻しているため燃料は常に配管内を循環している。 3.制御系統 エンジンの運転状態を検出するセンサと、センサからの情報を総合的に判断するエンジンコントロールコンピュータ、およびコンピュータの信号により働くアクチュエータから構成される。 例えば、燃料噴射量制御ではプレッシャセンサからの吸気管圧力信号をもとに基本噴射量が決定され、各センサからの信号で補正を加えインジェクタを通電する。 点火制御ではプレッシャセンサからの吸気管圧力とディストリビュータからのエンジン回転数から基本進角が決定され、この進角に各センサからの信号で補正を加えイグナイタに点火信号を送る。 3.D-Jetronicシステム全体構成図 Dジェトロの各系統 1.吸気系統 エアクリーナによつてろ過された空気は、エアフローメータを通り、スロットルボデー内のスロットルバルブ開度とエンジン回転に応じた量だけサージタンク内へ流れる。 エアフローメータでは、エンジンに吸入される空気量に応じメジヤリングプレートが開き空気量が測定されるのがEFI−Lです。 ここでは、EFI-LとEFI-Dとの違いを考えてみよう。 なお、EFl−Dではエアフローメ一タは設けられておらず、サージタンクの圧力をバキュームセンサで測定し空気量を検出している。 スロットルボデーには、スロットルバルブがあり、エンジンに吸入される空気量が制限される。 スロットルバルブ開度によリ調整された空気は、サージタンクから各気筒のマニホールドに分配されて、燃焼室に吸入される。 低温時にはエアバルブが開き、空気はスロットルボデーの他にエアバルブを通ってサージタンクに流入する。これにより、暖機中にスロットルバルブが全閉であってもサージタンクへ空気が流入し、その分だけアイドル時の回転が高くなる(フアーストアイドル作用)。サージタンクは吸入空気の脈動を防止し、エアフローメータヘの影響を少なくして吸入空気量の測定精度を向上させている。また各気筒の吸気干渉も防止している吸気系統にとって次のことが重要となる。 EFI−Lでは適切な混合気をつくるために、吸入空気量をエアフローメータによって測定し、コンピュータではこの吸入空気量に応じた噴射信号の時間を計算する。この噴射信号の時間だけインジェクタから燃料を噴射している。 したがって、エアフローメータ以降の吸気系統及びエンジン本体の各部(クランクケース等)からエアを吸い込むと、エアフローメータによる正しい吸入空気量の測定ができなくなる。 したがって、このような不具合が発生しないようにしなければなりません。 参 考 サーモワックス式エアバルブ
@スロットルボディ
エアバルブがスロットルボディに一体化されています。その他には、スロットルセンサとか、ダッシュポット等が取り付けられています。 サーモワックス式エアバルブの作動
サーモワックスと弁から構成され、低温時に弁を開き、高温時に弁を閉じる作動をする。 冷寒時
冷寒時サーモワックスの体積が小さくなっているため、弁はスプリングに押されて開き、エアが右図のように通過する。 暖機後
エンジンが暖かくなるにつれサーモワックスの体積が増大しピストンを押し出すため、弁が閉じエアの流れが止まる。 2.燃料系統
フューエルポンプ
フューエルポンプには、フューエルタンク外に設けられたインラインタイプと、フューエルタンク内に設けられたインタンクタイプの2種類があります。
(1)インラインタイプ
このポンプはウェットタイプとも呼ばれ、フェライト式モータとロータ式ポンプが一体となり、内部が燃料で満たされる構造です。 ポンプ部分はモータで駆動されるロータ、ポンプの外縁になるポンプスペーサ、ロータとポンプスペーサの間にありシールの役目をするローラからなります。ロータが回転するとローラは遠心力によりポンプスペーサ内壁にそって移動し、これら3部品で囲まれた部分の容積が変化して燃料がくまれます。 ポンプでくまれた燃料は、モータハウジング内でアーマチャのまわりをまわって吐出側ユニオンボルトに送られます。吐出部では、残圧用チェックバルブを押し上げサイレンサを通ったのち、フューエルプレッシャラインヘ吐出されます。サイレンサはポンプで発生した脈動を吸収する働きをし、ダイアフラムの動きにより防音の役目もします。もし吐出側に何らかの異常が発生し吐出できない場合は、モータ内の圧力が高くなってきますが、3.5s/p〜5.0s/pになるとりリーフバルブが押し上げられ、高圧燃料はポンプのサクション側と導通し、燃料はポンプとモータの中を循環して、それ以上燃圧が上がるのを防止します。残圧用チェックバルブはポンプ停止後は閉じ、プレッシャラインに残圧をもたせて再始動を容易にするものです。 (2)インタンクタイプ ポンプをフューエルタンク内に納めたもので、インラインタイプに比べてポンプ騒音の低減がはかれます。またインラインタイプがロータの回転で燃料を吐出するのに対し、インペラ(羽根溝車)でその作用を行うもので下記のような特徴があるため、現在ではほとんどの車種でこのタイプのポンプが採用されています。
●ロータ式ポンプに比べて吐出脈動が少ないうえに、サイレンサが不要となり小型、軽量となっます。
●ロータをインペラにすることにより、モータを低トルクにすることができ、モータ自体の信頼性向上および小型化ができます。
このポンプは直流モータ部、ターピン式ポンプ部からなり、チェックバルブ、リリーフバルブおよび吸入口、吐出口、フィルタが組み込まれています。 タービン式ポンプは、モータによって駆動されているインぺラとポンプを構成するポンプケーシング、ポンプカバーから成っています。モーターの回転とともにインペラが回転すると、インペラの外周にある羽根溝が、その前後での流体摩擦の作用により圧力差を生じさせます。モータの回転によりこの動作が繰り返されるとポンプ内部に渦流が発生し、燃料の圧力が上がりポンプ室から吐出され、モータ部を通りチェックバルブを経て吐出口より吐出されます。
3.制御系統
吸入空気量、エンジン回転数、水温、吸気温、加減速、排気管内の酸素濃度などの状態を各センサで検出し、それらの信号にもとづいてコンピュータで噴射時間を決定し、インジェクタヘ噴射信号を送る燃料噴射量制御、フューエル・ポンプのON−OFFを制御するフユーエル・ポンプ制御、コンピュータにあらかじめエンジン状態に応じた最適な点火時期を記憶させておき、各センサからの信号により該当する点火時期を選びだし、イグナイタに点火信号を送る点火時期制御等、コンピュータで集中的に制御し、エンジンを最適な状態で作動させるためのシステムです。以下に、トヨタのD-Jetronic
の制御系統の入出力図を示します。
セ ン サ 1.プレッシャセンサ
プレッシャセンサはサージタンクとゴムホースで接続されており、吸気管の圧力を半導体により検出し、電圧変化におきかえてコンピュータに送る。 (1)作動原理 真空に保たれたユニット内にシリコンチップが取り付けられており,チップの片面に吸気管圧力が加わるようになっている。 ポートに圧力が加わるとシリコンチップは真空との圧力差に応じた力を受ける。するとチップの抵抗値が変化する。(ピエゾ抵抗効果)これをセンサに内蔵されたICで電圧に変換する。 (2)出力特性 プレッシャセンサは、大気圧を基準とせず真空との圧力差(絶対圧)を検出しているため、高地などでも大気圧の変化の影響をうけず、適正な空燃比に制御できる。出力電圧は右図のように、吸気管圧力に比例した変化となる。 2.ディストリビュータ
ディストリビュータには、エンジン回転数を検出するNEピックアップとクランク位置を検出するGピックアップがある。
(1)NE信号
NEシグナルロータは24枚の歯があるためディストリビュータが1回転するとNEピックアップには24パルスが出力される。 コンピュータはこのパルスによって30度ごとのクランク角およびエンジン回転数を検出する。
(2)G信号 Gシグナルロータは4枚の歯があるためディストリビュータが1回転すると4パルスが出力される。したがって、このパルスは180度CA毎になる。 G信号はピストン上死点付近でロータがピックアップコイルに最も近づく位置にあるため、この電圧を検出することで上死点位置(クランク位置)を知ることができる。 3.スロットルポジションセンサ
スロットルボデーに取りつけられており、スロットルバルブ開度を検出する。 (1)アイドル検出 スロットルバルブ全閉時は、アイドル信号用可動接点によりIDL〜E1間がONしてアイドルを検出している。 (2)開度検出
Vc端子には5vが加わっており、スロットルバルブ開度に応じて可動接点が低抗体上を摺動してゆき、VTA端子にはスロットルバルブ開度に比例した電圧が出力される。 又、開度が一定以上になるとECUは高負荷であると検知する。 4.水温センサ
冷却水温を検出するセンサで、ウオータアウトレットハウジングに取り付けられている。
温度により抵抗値の大きく変化するサーミスタを内蔵しており、冷却水温の変化をこのサーミスタの抵抗値の変化で検出している。
5.吸気温センサ
吸気温度を検出するセンサで、水温センサと同一の特性のサーミスタを使用しており、サージタンクに取り付けられている。
6.O2センサ
O2センサは排気マニホールドに取り付けられており、大気と排気ガス中の酸素濃度の比により起電力を発生する一種の電池である。
O2センサの起電力は、排気ガス中の酸素濃度が高く空燃比がリーンのとき低く(約0v)、逆に排気ガス中の酸素濃度が低く空燃比がリッチのとき高く(約1v)なる。
7.車速センサ スピードメータ内のリードスイッチまたは、トランジスタによりメータケーブルが1回転すると、4つのON−OFF信号をECUへ送る。
8.スタータ スイッチ
キースイッチ スタータ位置の信号で、エンジンのクランキングを検出する。
9.エアコン信号
コンプレッサの作動状態を検出する信号で、マグネットクラッチのON、OFFを検出する。
10.排気温センサ
触媒コンバータに取りつけられており、高温検出用のサーミスタを使用し排気温度を検出している。
燃料噴射制御(D−EFI)
1.燃料噴射制御の構成
2.燃料噴射の方式 (1) 噴射時期
3.同期噴射方式 全気筒同時にエンジンの1サイクルに必要な燃料を2回に分け墳射する。 つまりエンジン1回転に1回噴射する。 噴射はG.NE信号に同期して上死点前70度CAで開始する。
4.噴射量の制御 4−1 始動時の噴射量
噴射時間=始動時噴射時間×吸気温補正十電圧補正
=NE・THW×THA+(+B)
エンジン始動時は、コンピュータが記憶している始動時の噴射時間と吸気温および電圧による補正により噴射時間が決まる。
始動時の判走はエンジン回転信号で行い500rpm以下を始動状態とする。
4−2 通常の噴射量
通常の噴射量は次の式で決まる。
噴射時間=基本噴射時間×補正係数+電圧補正
(1)基本噴射時間の決定
基本噴射時間=吸気管圧力により決まる値×エンジン回転数補正
コンピュータは、あらかじめ吸気管圧カに応じた基本値を記憶しておりプレッシャセンサからの信号に応じて選びだす。 この値にエンジン回転数により決まる補正係数をかけ合わせて基本噴射時間を決定する。
・・参考・・ シリンダ内に吸入される空気量(重さ)Qは(V:シリンダ容積、r:比重 P:吸気 管圧カ R:定数 T:温度)Vは排気量で決まり、Rは定数であり、温度が一定とすれば、吸入空気量はシリンダ内圧に比例する。 また空燃比は空気量/燃料のため燃料噴射量も決まる。
ただし実際には圧力から算出していては時間がかかるため、あらかじめ噴射時間を記憶させてある。 (2)電圧補正
バッテリ電圧が変動すると通電時間が同じでもインジェクタの機械的作動遅れ時間がかわってしまい、噴射量が変動する。これを防止するためバッテリ電圧に応じて電圧補正時間を調整する。
(3)補正係数
各センサの信号によりエンジン状態を検出し、噴射時間を補正する。
・補正係数=暖機増量係数×吸気温補正 係数×・・・×(加速増量+・・・・)
@吸気温補正(吸入空気温度による空気密度変化で生じる空燃比のずれを補正する。)
A暖機増量 (冷却水温に応じて噴射量を補正し、冷間時の運転性を向上させる。) (次ページ図参照) B過渡時空燃比補正
a 加速増量
加速の応答性を向上するために増量する。
次の条件が成立すると増量する
1.アイドル接点がON→OFF(IDL)
2.スロットル開度信号が大きくなる。(VTA)
3.圧力信号が大きくなる。(PIM)
水温が低いときはさらに増量が大きくなる。(THW)
b 減速減量
減速時に噴射量を減量し、運転性および燃費を向上する。
・圧力信号が小さくなったときに減量する。
C始動後増量
始動後のエンジン回転を安定させるための増量で、始動直後に水温で決まる増量となり、その後徐々に減少する。
D出力増量
スロットルバルブ開度が25度以上のときは一定値l増量する。(10%UP)
E空燃比フィードバック補正
02センサの信号により噴射量の増減を行ない、空燃比を三元触媒の浄化性能の高い理論空燃比付近の狭い範囲に制御する。
ただし次の場合は運転性確保のためフィードバック制御を停止し、基本の噴射持性になる。
(フィードバック補正比=1.0)
《フィートバック停止条件》
1.エンジン始動時 2.始動後増量中 3.出カ増量中
4.冷却水温が低いとき(60℃以下) 5.リーン信号が8秒以上続いたとき 6.燃料カット中
F触媒OT補正
排気温センサの温度が900度C以上になると減量する。 尚この補正が一度行なわれると900℃以下になっても、イグニションスイッチがOFFになるまで減量は続く。
Gアイドル安定化補正
アイドル回転の安定化をはかるため、吸気管圧カおよびエンジン回転数の変化に応じて燃料の増減を行なう。
H燃料カット イ.減速時燃料カット
IDL接点がONでエンジン回転数がカット回転数以上のとき燃料噴射を停止し、触媒の加熱防止、燃費の向上をはかっている。 エンジン回転数が復帰回転数以下、またはIDL接点がOFFとなったとき復帰する。 燃料カットおよび復帰回転数は水温、AC、車速により変化する。
(水温80℃ A/C OFF) 口.高車速燃料力ット
車速が180km/h以上でスロットル開度が30℃以上のとき燃料噴射を停止する。
ハ.高回転燃料カット
エンジン回転数が7.600rpm以上のとき燃料噴射を停止する。
5.非同期噴射
始動性の向上、加速時の応答性向上のため、通常の噴射(同期噴射)とは別に、各センサからの信号が入った直後、一定量の噴射を行う。
(1)始動時
イグニションスイッチON後、またはエンスト後G信号(ディストリビュータ クランク位置センサ)に続いてNE信号が入力された場合に1回墳射を行なう。
(2)加速時
エンジン回転2.500rpm以下でIDL接点がONからOFFとなったとき1回噴射する。
また、スロットルバルブ開度の変化が大きいときにも噴射を行なう。
参考 学習制御
エンジンの偏差および経時変化などによる空燃比のズレを補正する。 学習の結果は低温時にも適用するため、低温時の噴射量も適切なものとなる。したがってCO調整は不要となる。
学習制御の方法
空燃比フィードバック中に補正係数の平均値を計算する。平均値が1であれば基本噴射量で決まる空燃比は理論空燃比となる。ところが平均値が1よりも小さければ、基本噴射量で決まる空燃比はリッチであることがわかる。逆に平均値が1よりも大きければ空燃比はリーンである。 そこで学習制御ではプレッシャセンサで決まる基本噴射量を、フィードバック補正時の補正係数に応じて変更し、常に基本噴射量で決まる空燃比が理論空燃比になるようにしている。ただし、記憶しているすべての基本噴射量ごとに修正値を算出しなくても制御精度は保たれるため、プレッシャセンサの出カをいくつかのブロックに区切り、プロック毎の修正値を求めている。
6.フューエルポンプ制御 EFIのフューエルポンプは、エンジンが回転中のみ作動するようになっている。また、始動時エンジン回転が5rpm以上またはSTA ONのときにサーキットオープニンブリレーに信号を送りフューエルポンプを作動させる。
7.インジェクタ駆動方式 (電流駆動方式)
電流駆動方式ではインジェクタに直接バッテリ電圧をかけインジェクタヘの通電をON、OFFしプランジャ吸引時は大きな電流を流して立ち上がりを良くし、プランジャ保持時は小さな電流を流している。このためインジェクタの応答性が良く、燃料の調量範囲が広くなっている。
点火時期制御(ESA)
従来の点火制御では、ディストリビュータ内にバキュームアドバンサやガバナ機構を設けて、負荷状態やエンジン回転数に応じて点火時期を制御しているが、点火時期の特性は21ページ上(右図)のようにほぼ直線のため、エンジンの要求する点火時期に対してずれが大きくなる欠点があった。
エンジンコントロールシステムの点火時期制御(ESA)では、コンピュータにあらかじめエンジン状態に応じた最適な点火時期を記憶させておき、各センサからの信号により該当する点火時期を選び出し、イグナイタに点火信号を送り点火時期を制御している。21ページ(左図)の特性からもわかるように制御精度が向上しており、燃費・出力の面でも有利になる。 1.点火制御の概要
エンジンコントロールシステムのESAは、ディストリビュータからのエンジン回転信号NE、クランク位置信号Gと各センサからの信号により運転状態を検出し、その状態に合った最適な点火時期及び通電時間を決定している。 また常に点火されたかどうかをモニタしており、連続して3〜5回点火されなかったと判定した場合、燃料噴射を停止させる機能があり、失火したときの触媒温度の上昇を防止している。
2.点火時期制御の構成
3.通常の点火時期
点火時期=基本進角十補正進角十イニシャ ル(BTDC10。)
(1)基本進角
@IDL接点ON
IDL接点がONのときは左図の持性となり、エアコンONの場合はさらに進角を行なう。
AlDL接点OFF
IDL接点OFFのときはコンピュータは22ページ上図のようなデータを記憶しており、エンジン回転数と吸気管圧力信号PlMにより基本進角を選びだす。
(2)補正進角
@暖機進角
冷却水温が低いとき、点火時期を進角させて運転性を向上している。
Aオーバヒート補正
冷却水温が高いとき、アイドルでは点火時期を進め、高負荷域では遅らせている。
B回転数補正
アイドリンゲで、エンジンに負荷が掛かり、エンジン回転数がそれまでの平均値より低くなったとき、その差△Nにより進角させアイドルを安定させる。
C空燃比フィードバック補正
アイドリングの空燃比フィードバック制御中で、燃料量を減少させているとき進角しアイドリングを安定させている。 ↑右図 (回転数補正)
4.固定進角
エンジン始動時(スタータON)および始動直 後は、エンジン回転速度の変動が大きいため、進角計算をせずディストリビュータの初期セッ ト角(BTDC10゜CA)に固定する。
またエンジン調整・点火時期の確認時、T端子 をONすると点火進角の計算を停止してディストリビュータの初期セット角に固定する。
吸気制御(T一VlS)
インテークマニホールドの各気筒の通路を2分割し、片側の通路に吸気制御バルブを設け、このバルブをエンジン回転数に応じて開閉させ、低速域の性能低下を防ぐ。
1.構造
(1)吸気制御バルブ
シリンダヘッドとインテークマニホルド間に取り付けられており、各シリンダヘの2つのポートのうちの1つにバルブが設けられており、通路の開閉を行います。アクチュエータはダイアフラム室に作用する負圧によりバルブの開閉を行います。
(2)負圧切り替え弁(VSV)
エンジンコントロールコンピュータからの信号により、吸気制御バルブのアクチュエータヘの負圧の切り替えを行います。
エンジン回転数が約4700rpm以下では、コンピュータによりVSVがONとなるため、アクチュエータに負圧が働き制御バルブは閉じる。
エンジン回転数が約4700rpm以上になると、VSVがOFFするためアクチュエータに大気が掛かり、制御バルブは開く。
排気温警告
排気温センサの信号が900度C以上になると排気温ランプが点灯する。
ダイアグノーシス(自己診断機能)
ダイアグノーシスとは、エンジンコントロールコンピュータの各入力信号をコンピュータ自身が診断し、異常が発生した場合にこれを記憶し表示するものである。
診断内容はコンビネーションメータ内のエンジンチェックランプで表示される。
ダイアグノーシス 1.ダイアグノーシスの表示方法
(1)ダイアグノーシスで異常が検出されると、ランプが点灯し運転者に警告する。
・異常簡所が正常に戻った場合、ランプは消灯するが、コンピュータは異常を記憶している。 ・イグニションスィッチをONにすると、球切チェックのためランプが点灯する。
(2)T端子を短絡(ON)にすると診断(異常)項目をランプの点滅回数で表示する。
(3)異常の記憶を消却させる場合は、バッテリ端子かEFlヒューズを一旦取り外し、異常コードがキャンセルされたことを確認すること。
2.診断項目の表示(T端子0N)
(1)異常項目の無いとき(正常時) 約3秒毎に1回点滅する。 (2)異常検出時 異常検出、異常記憶時にIDL ON、T端子 ONにするとダイアグノーシスの項目番号を出力する。
異常項目が2ケ以上ある時はつづけて表示する。 フェイルセーフ機能
フェイルセーフとは異常が発生(ありえない信号が入力されたり、信号が無入力となる、点火しない等)して、エンジンが不調となる場合、コンピュータに記憶した正しい値に切換えエンジンを正常にもどしたり、エンジンに重大な影響を与える場合は停止させる機能をいう。
1.点火系統異常検出時
IGf信号(点火モニタ信号)が3〜5点火連続して入力されない場合、点火系の異常とみなし燃料噴射を停止する。(IGf信号線の断線の場合も同様、燃料噴射を停止する。)
2.吸気管圧力信号異常検出時
プレッシャセンサからの圧カ信号がオープンまたはショートした場合、点火時期および噴射時間をある値に固定し、走行を可能にする。(バックアップ機能)
3.温度センサ(水温、吸気温)異常検出時
各温度センサが断線あるいは短絡した場合、空燃比が過度に濃くなったり薄くなったりしてエンジン不調となる。 このため各センサが異常信号(−50゜C以下、139゜C以上)を出した場合は、その信号はありえない信号として次のような信号に置き換えて制御を行う。
4.バックアップ機能
万一エンジンコントロールコンピュータのCPUに異常が生じたときや、プレッシャセンサからの信号が異常になったときでもスタータ信号やスロットルボジションセンサのIDL接点の条件により、あらかじめ決められた燃料噴射や点火時期とし車両を走行可能な状態にする機能である。
バックアップモードになったときはエンジンチェックランプは点灯するが、CPUが異常になったときはダイアグノーシス表示は行なわない。
エンジンチェックランプが点灯した場合は点火時期(BTDCl0゜CA バックアップ時)を点検して下さい。
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